「本日天気晴朗ナレドモ波高シ」という文を読んで、秋山真之だ、司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』に出てきたあの日本海海戦の場面だと、ぱっと思い浮かぶ。
これは、その本を読んでいたからだ。
たまに生徒から「昔から本を良く読んでいたの?」と聞かれることがある。
答えは、「NO」だ。実家の家の本棚にはマンガがずらりとあった。
マンガは大好きでよく読んでいた。
『ダイの大冒険』は好きで、何周も読み返した。大魔王バーンと戦うときにポップが言った台詞は忘れられない。
「一瞬だけど閃光のようにまぶしく燃えて生き抜いてやる。それがおれたち人間の生き方だ。」
読書少年ではなく、マンガ少年だった。
はじめて自分の力で最後まで読みきった本はハリウッド版リメイクされた「ゴジラ」だ。
中2の終わり頃。その頃やっと漢字が読めるようになってきたからというのもある。
小説の『ゴジラ』は、NYマンハッタンを舞台にゴジラが暴れまくる内容の話だ。
そこから本を読むことが楽しいと感じるようになった。
本を一冊読み終えた成功体験もあったのかもしれない。
そのあと、赤川次郎の三毛猫ホームズシリーズから始まり、東野圭吾、村上春樹、宮部みゆきなどの作品を読み漁った。
あの『ゴジラ』がきっかけで本を読むようになったと、この本を読むまで思っていた。
しかし、実は違ったかもしれない。
なぜなら子どもの頃、母親はよく本を読んでいた。また、絵本の読み聞かせなどをよくしてくれていたから。
昔、祖父の家に何百冊もの絵本があった。
母親が本棚に大量の絵本を置いていた。母親が言うには、その絵本を使って寝る前に毎晩「読み聞かせ」を弟と一緒にしていた、という。
ある教育本の中に「読み聞かせ」によって子どもの脳の思考部分をつかさどる大脳新皮質(前頭前野)を活性化させる、と書いてあった。
つまり、「読み聞かせ」によって、「聞く力を育てる」や「イメージする力を育てる」という効果は薄いということである。
そのような効果ではなく、「読み聞かせ」は、子どもの本能的なところに働きかけるという。
その本にはさらにこう書いてある、「読み聞かせ」は「心の脳」に働きかけ、健全な「心の脳」を育てる効用があると言えます。
この本を読んで、母親に感謝した。
今、本が好きで読めているのは彼女のおかげかもしれないからだ。
いつか子どもができたら、自分も絵本の読み聞かせをしてあげたり、かっこよく本を読む姿を子どもに見せたいと思う。